お子さんの耳垢

現在の医師卒後研修制度のことはわかりませんが、私が研修医の頃は、卒後すぐに大学病院で研修を受けるのが一般的でした。大学病院の診療科は、教授を頂点としたピラミッド構造で、研修医というのは末席です。当時、週に1回、教授回診がありました。教授回診で, 教授が診察をする前に、「必ず耳垢は取っておけよ。耳垢がある状態で教授に診察させるのは失礼なんだからな!」と私は先輩医師からキツく言われていました。耳垢があると耳所見が取れないことがありますから、耳鼻咽喉科の診察としては、極めて妥当な忠告を受けていました。耳鼻咽喉科の診察としては、耳垢を除去しようとするのは標準なのです。

 

他方、耳垢というのは、一般の方が思っているほど簡単には取り除くことができない場合があります。そうした場合、耳垢を柔らかくする薬(耳垢水)を点耳し、耳垢を柔らかくしてから取り除くことになります。しかし、耳垢が柔らかくなるには前提があり、耳垢水の点耳後、一定時間、例えば5分~20分くらいは、耳垢が溜まっている側の耳を上にした状態を維持していなければなりません。大人はともかく、子供に対しては耳垢水を効果的に使うのが難しい場合があります。

加えて、医師が診察上、耳垢除去が困難になる一因として、子供が静止していないということがあります。子供が静止できないのは、ある意味当たり前で、小さなお子さんの立場に立てば、暴れたくもなると思います。現在、生後2か月から予防接種が目白押しです。毎月、毎月、クリニックで注射をするのです。白衣にマスクの医師や医療従事者を見れば、怖くなって大暴れするのは当たり前です。

当院では、お子さんの初診時、可能な範囲で耳垢除去を試みますが、あまり無理をせず、深追いしない場合がございます。その場合には、何回かに分けて耳垢除去する予定です。

 

結語

1.耳鼻咽喉科診察の原則としては、耳垢は取ることになっている。

1.しかし、静止が難しいお子さんでは、外耳道を傷つけるリスクがあるので、何度かに分けて取ることがある。(万一, 外耳道を傷つけた場合でも, 時間が経てば治ります。ご自宅で耳掃除中に損傷した場合と同様です。聞こえには影響はなく, ご心配は不要です。

1.保護者は耳垢取りが容易であると認識していることが多く、他方、医師が耳垢除去に時間がかかるケースがある。つまり、両者の認識に乖離がある。医師が耳垢除去する際に、保護者が予想した以上に時間がかかる場合には、保護者は医師に伝えて欲しい。つまり、「今日はもう耳垢取りを中止して欲しい」と。一生懸命に耳垢除去をしている医師には、周囲がみえなくなっていることもございますので。

 

【当院は複数医師が在籍しており, 医師により若干考えが違う場合もございます. それは, 各医師の裁量範囲内であるとお考え下さい.】