難聴の放置が、認知症リスクを高める?

 

【難聴に伴うリスク】
中年期の難聴を放置することが、認知症リスクを高めることが知られています。 文献1 )
その他、難聴を放置することで、社会的孤立やうつ病、更には脳萎縮が加速することが確認されています。
一般に、健康診断で行われる聴力検査は、1000Hzと4000Hzの周波数を調べるのみです。これに対し、耳鼻咽喉科で行われる聴力検査は、7つの周波数を調べる精密な検査です。
認知症がご心配な方は、耳鼻咽喉科を受診し、どの程度の聞こえであるのかを精査しましょう。

 

【難聴になるリスク】
難聴になるリスクとして知られているものとして、糖尿病、高血圧、脂質異常症、動脈硬化、過体重、加齢、喫煙、過度な飲酒、騒音などがあります。このような生活習慣病の方・騒音下での職場環境にある方は、現時点で、どの程度の聴力であるのか、耳鼻咽喉科で精査をおすすめします。

一般に、健康診断で行われる聴力検査は、単なるスクリーニング検査であり、異常を見逃しやすいです。これに対し、耳鼻咽喉科で行われる聴力検査は、気導・骨導を含めた正確な検査です。メタボリックシンドローム患者さんは突発性難聴の予後が悪いという報告文献2 ) もあり、(つまり、難聴になりやすく、且つ、治りにくいということです)生活習慣病の方は当然として、中年期以降の方すべてに、耳鼻咽喉科で定期的精査をおすすめします。

 

【結語】
中年期の難聴放置が認知症リスクを高め、中年期に顕在化する生活習慣病が難聴リスクを高める。中年期から耳鼻咽喉科での定期的な聴力検査が重要である。純音聴力検査のコピーを手渡さない診療所も少なくありませんが、当院では、全員の方に純音聴力検査の結果をお渡ししております。当院であれば、予約なしで聴力検査が可能です。すでに耳鼻咽喉科に定期受診されている方は、あなたが定期受診している耳鼻咽喉科クリニックの職員が一定時間 「聴力検査の研修」 を受けた方であるのか、その事実を確認されることをおすすめします。

 

文献1 )

Title: Dementia prevention, intervention, and care.

Author(s): Livingston, Gill; Sommerlad, Andrew; Orgeta, Vasiliki; et al.

Source: Lancet Published July 19, 2017

DOI: 10.1016/S0140-6736(17)31363-6 

文献2 )

Title: Association of Metabolic Syndrome With Sudden Sensorineural Hearing Loss

Author(s): Su Young Jung,; Haeng Seon Shim,; Young Min Hah,; et al.

Source: JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. Published online February 15, 2018

DOI: 10.1001/jamaoto.2017.3144

【難聴が認知症の危険因子】 2017年7月、国際アルツハイマー病会議(AAIC)において、ランセット国際委員会が「認知症症例の約35%は潜在的に修正可能な9つの危険因子に起因する」と発表しました。「難聴」は「高血圧」「肥満」「糖尿病」などとともに9つの危険因子の一つに挙げられましたが、その際「予防できる要因の中で、難聴は認知症の最も大きな危険因子である」という指摘がなされたのです。(ただし先天性難聴や一側性難聴はこの限りではありません。)近年の国内外の研究により、難聴のために、音の刺激や脳に伝えられる情報量が少ない状態にさらされてしまうと、脳の萎縮や、神経細胞の弱まりが進み、それが認知症の発症に大きく影響することが明らかになってきました。 また、難聴のためにコミュニケーションがうまくいかなくなると、人との会話をつい避けるようになってしまいます。そうすると、次第に抑うつ状態に陥ったり、社会的に孤立してしまう危険もあります。実はそれらもまた、認知症の危険因子として考えられています。だから、「難聴が最も大きな危険因子」だと言われているのです。