大人の「のど痛い」は、どの診療科を受診すべきなのか?

扁桃周囲膿瘍と診断した患者さまが、本日2名いました。午前中に19歳女性、午後に(注意:2019年5月以降、一年を通して、午後診療はおこなっておりません)51歳男性の方が、いずれも左側の扁桃周囲膿瘍の所見があり、すぐに入院施設のある病院への紹介が必要な状態でした。いずれも、患者さまの希望で、横浜労災病院耳鼻科への搬送を行いました。急な要請であるにも拘わらず、受け入れを快諾していただき、いつもお世話になりっぱなしの病院の先生方には、頭が上がりません。

 

のどが痛いという自覚症状で、命に関わる病気として、扁桃周囲膿瘍、そして急性喉頭蓋炎が知られています。

いずれの疾患も、耳鼻科でしか対応ができない疾患です。上記2名の方は、他科で加療されていましたが、「のどの痛みが改善しなければ耳鼻科へ」 と指示されていました。2名の方とも、当院に受診歴はございませんでした。すぐに切開・排膿と入院が必要と考え、急いで紹介状を書きました。昨今の医療を取り巻く状況を勘案すれば、患者さまがお亡くなりになった場合には、ご家族から訴訟提起されるのは必定です。また、訴訟提起されるか否かという以前の問題として、医師としてなすべき対処をしなかったという自責の念に苛まれながら、今後を生きていくのは嫌なものです。

患者さまの状態を確認しながら、急いで紹介状を作成・お渡しし、直ちに病院に行くようお伝えしました。患者さまが病院に向かい、ほっと肩の荷が下りました。しかし、その後、別の感情が湧いてきました。

転医義務は果たしたつもりでしたが、無事に病院に着いてくれたかな? タクシーを呼ばずに、救急車を要請すればよかったかな? などと、その後はヤキモキしながら診療を続けておりました。

 

(まとめ)

大人の方で「のどが痛い」場合には、初期段階から耳鼻科受診をおすすめします。耳鼻科医であれば、どの段階で外科的処置や入院が必要であるのか判断できます。命にかかわるような状態になってから、唐突に、飛び込み受診されるのは、患者さまにとっては治癒に時間がかかり(更にいえば、死亡リスクが上がり)、医療者にとっては緊張した場面を生み、お互いにとって不利益だと考えます。

【お子さまの咽頭痛は、小児科や他院耳鼻科の受診をお願い申し上げます】

■扁桃周囲膿瘍とは、扁桃周囲間隙に生じた膿瘍であり、深頸部膿瘍の中で最も症例が多く、致死性のある疾患です。

■扁桃周囲間隙とは、上咽頭収縮筋と口蓋扁桃被膜の間の疎性結合織の層です。解剖学的には、扁桃周囲間隙は咽頭粘膜間隙に含まれます。

■深頸部膿瘍とは、頸部筋膜間間隙に生じた膿瘍です。気道狭窄、縦隔炎、敗血症、大血管破裂などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。

口蓋扁桃とは、中咽頭にある扁桃で、前口蓋弓 (口蓋舌弓) と後口蓋弓 (口蓋咽頭弓) との間の扁桃洞に存在します。表面は重層扁平上皮で被われ、背後は結合織から成る被膜に包まれています。

■中咽頭とは、硬口蓋と軟口蓋との移行部から喉頭蓋谷底部に相当する高さまでの解剖学的領域です。(但し、軟口蓋裏面と後壁においては、後口蓋弓の頂部に相当する高さが中咽頭の頭側縁となります。)

■喉頭蓋とは、舌根を起始部とする軟骨を主体とする組織です。機能的には、嚥下咽頭相において、舌骨・喉頭蓋軟骨拳上により、喉頭蓋が反転して喉頭閉鎖を起こし、食塊の喉頭流入を防ぎます。喉頭蓋の急性炎症である急性喉頭蓋炎では、喉頭蓋が軟骨と粘膜からできているという解剖学的特性から、短時間のうちに呼吸困難・窒息により死に至ることがあります。