鼻腔がんで鼻を失った女性「顔を洗うたびに激痛だった」(カナダ)

鼻腔がんで鼻を失った女性「顔を洗うたびに激痛だった」(カナダ)

 

カナダ在住のある女性が鼻腔がんのため鼻の切除手術を受けた。顔を洗ったり服を着る時に鼻に触れると時折痛みを感じることがあったそうだが、時が経つにつれて耐えられないほどの激痛が走るようになったという。詳しい検査の結果、鼻孔にがん性の腫瘍があることが発覚した女性は放射線治療を受けるも効果は現れず、医師からは鼻を切除するしか選択肢はないと告げられた。『Metro』『The Sun』などが伝えている。

 

カナダのハンツビルに住むトリッシュ・ホーリーさん(Trish Hawley、42)は2020年7月、鼻腔がんのため鼻の切除手術を受けた。

 

最初に異変を感じたのは2019年夏のことで、顔を洗ったり服を着る時に鼻に触れると痛みを感じるようになり、その後も痛みは増すばかりだったという。

 

トリッシュさんはがんが発覚するまでの経緯をこう振り返った。

 

「9月に医師に診てもらった時には鼻が乾燥しているからだと言われ、大したことないと思っていました。でも月日がたつにつれて痛みが強くなり、抗生物質を服用したり他の治療を受けましたが効果はありませんでした。クリスマスに夫ブライアン(Brian)とハリファックスにある義母の家を訪ねた時に愛犬が私の鼻に飛び上がってきて。もう涙が出るほど痛くて耐えられず、早めに帰ることにしたんです。」

 

「その頃には鼻の中に何かできているのが見えて、少しずつ大きくなっているようでした。2020年1月になってから耳鼻科専門医の診察を受けることになり、副鼻腔のスキャン検査では特に異常はありませんでしたが、鼻孔にしこりのようなものができているのが分かりました。医師によると石灰化した嚢胞か血栓だろうとのことで、2月に切除手術の予約をしました。簡単な手術の予定でしたが、当日になってそれが腫瘍だと分かって生体検査をした結果、がんであることが判明したのです。」

 

その後、腫瘍を小さくするために放射線治療を開始したトリッシュさん。6週間にわたる治療を終えたのは2020年4月のことだったが、その効果を確認できるまではさらに3か月待たなければならなかった。しかし治療後2週間ほどで再び鼻に痛みを感じるようになってしまったという。

 

「最初のうちは様子を見ていたのですが、6月下旬に詳しい検査を受けることになりました。その結果、放射線治療は効いておらず腫瘍が急速に成長していることが分かったのです。私にはもう鼻を切除するという選択肢しか残されていませんでした。私は外見のことはあまり気にしませんが、鼻がなくなってしまうことで自分のアイデンティティはどうなってしまうのだろうという葛藤がありました。ただその時はとても痛かったので、腫瘍に消えてほしいと思っていました。」

 

そして2020年7月、鼻の切除手術を受けたトリッシュさんは、その後の生活についてこのように明かしている。

 

「腫瘍が大きくなっていたので傷口も広くなってしまい、傷が治るまでは1年ほどかかりました。夫はしばらく鼻のない私を見ることができませんでしたが、手術が終わって数か月間は鼻にパッキンを入れていたので人前でも快適に過ごすことができました。何かの手術を受けたように見えましたが、その時はまだ鼻がありましたからね。鼻がないとわかるようになったのは、平らな包帯と固定できないマスクをつけるようになってからです。それからは人にじろじろ見られたり指をさされることも増えました。それは今でも続いていますが、人前で普通に過ごせるようになるまでには何か月もかかりました。」

 

「手術から1年以上が経過した2021年10月、はじめて義鼻を装着しました。事前に傷口の型を取ってもらいに行ったのですが、2回目に訪れた時には蝋で仮の義鼻を作ってくれていて、私はそれを装着して泣いてしまって…。外見はもちろん、散歩に行ってもじろじろ見られたり、笑われたりすることがないし、眼鏡をかけられるようになったのですから。鼻を手に入れることはとても素晴らしいことです。」

 

現在は再発の兆候を確認するため半年に一度の検査を受けているというトリッシュさん。そんな彼女は、顔に障害のある人への偏見と差別をなくすことを目指すカナダの慈善団体「AboutFace」のキャンペーンなどに参加し、自らの経験をもとに顔に違いを持つ人々への認識と理解を深める活動を続けているそうだ。

 

(TechinsightJapan編集部上川華子)