がん細胞をレーザー光で破壊「光免疫療法」 関西医大に国内初拠点

がん細胞をレーザー光で破壊「光免疫療法」 関西医大に国内初拠点

 

 レーザー光を使い、がん細胞をピンポイントで破壊する治療法を研究する国内初の拠点「光免疫医学研究所」が4月、関西医科大(大阪府枚方市)に誕生した。この「光免疫療法」は、ほかの治療法と比べて全身の副作用を抑えられる利点があるが、まだ適用できる症例は限定的。研究所は病院と連携した研究を担い、治療効果の向上や適用範囲の拡大を目指していく。

 

 「臨床と基礎研究のサイクルを回し、患者ががんを完治できることを最終的なゴールにしたい」。4月にあった記者会見で、研究所の小林久隆所長は力強く語った。小林所長は米国立衛生研究所(NIH)の主任研究員で、光免疫療法を開発した「生みの親」だ。

 

 がん治療で放射線や抗がん剤を用いると、がん細胞だけでなく正常な細胞も壊してしまい、激しい副作用をもたらす原因になる。光免疫療法では、がん細胞の表面にくっつきやすい物質を投与。がん細胞に多くの薬が結合し、そこにレーザー光を当てて化学反応を起こさせることができれば、がん細胞だけを破壊でき、副作用を抑えられるという仕組みだ。

 

 ◇「第5のがん治療」として注目

 

 光免疫療法は2020年9月、世界で初めて日本で承認。外科的手術、抗がん剤、放射線、免疫療法に続く「第5のがん治療」として注目を集める。

 

 しかし現状では、がんの適用症例は限定的だ。保険診療の対象は、口や喉などにできた外科的手術などでは除去できないがんに限られている。小林所長によると、対象のがんを増やすためには、基礎研究を含め科学的な知見を積み上げる必要があるという。

 

 研究所は約1500平方メートルの敷地に、光免疫療法用の新規薬剤開発をする基盤開発部門、光免疫療法後の免疫反応を解析する免疫部門、光免疫療法後の患者組織を調べる腫瘍病理学部門の3部門がある。光免疫療法を研究するための最新機器を備え、企業や研究者と研究・開発していく。

 

 関西医大は既に2021年、付属病院に光免疫療法センターを開設している。研究所は、同センターで治療を受けた患者の組織を解析して、がんや体内での変化を研究するほか、研究所で得られた知見をセンターで応用していくことも考えられるという。

 

 小林所長は取材に、「今は限られた患者にしか利用できず、大きな期待を持たせすぎるのは良くないが、10年後には多くの患者さんに使えるようにしていきたい」と意気込んだ。【田畠広景】