大腸内視鏡検査前の下剤が苦手な人に朗報! 口から飲まずに済む「鼻チューブ法」という選択肢

 

大腸内視鏡検査前の下剤が苦手な人に朗報! 口から飲まずに済む「鼻チューブ法」という選択肢

 

大腸内視鏡検査には、大腸の中身を空にするための下剤処置が欠かせません。しかし、独特の風味がする下剤が苦手な人もいらっしゃるのではないしょうか。そこで、下剤の味を感じなくて済む方法について、「鎌倉逗子胃腸肛門内視鏡クリニック」の道躰先生に伺ってみました。

 

[この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]

 

下剤がまずくて飲めない場合の対策

編集部:

大腸内視鏡検査の前は下剤を飲むのですよね?

 

道躰先生:

基本的にはそうなります。この下剤の評判は悪く、多くの人が「まずい」とおっしゃっています。それを大型ペットボトルの分量ほど飲むのですから、患者さんにとってはつらい作業でしょう。

 

編集部:

そこで本題です。下剤を飲まなくてもいい大腸内視鏡検査方法があると聞きました。

 

道躰先生:

患者さんが直接飲む代わりに、鼻から挿入したチューブで下剤を送り込む「鼻チューブ法」という方法があります。私自身、大学病院に在籍していたとき、寝たきりで自分では下剤を飲めない患者さんの大腸内視鏡検査に用いていました。そして開院後、下剤が苦手な患者さんにも利用していただきたいと、取り入れることにしました。

 

編集部:

鼻にチューブを入れて下剤を体内に入れるのですね。

 

道躰先生:

そうです。その目的は「まずくて飲めない対策」になります。鼻から極細のチューブを挿入して先端を胃の中に留置し、そこから下剤を注入します。チューブ挿入時に一定の苦しさは感じるため、全く楽ということはありません。「大量の下剤を味わわずに飲む」ことが、鼻チューブ法の主な趣旨です。

 

編集部:

体内に入れる下剤の量は一緒ですか?

 

道躰先生:

同じです。なお、下剤を加圧して送り込むのではなく、重力の力で自然に送り出しています。イメージとしては点滴に似ていますね。ですから、鼻チューブ法をしている時間は、普通に飲む時間と大差ないです。2時間くらいかかると思っておいてください。

 

鼻チューブ法の向き・不向き

編集部:

鼻チューブ法ができない人はいますか?

 

道躰先生:

基本的に、できない人はいません。しかし、腸閉塞(へいそく)の疑いがある人は、鼻チューブ法に限らず、下剤自体を用いることができません。下剤が詰まって、消化管をパンパンにしてしまうのが理由です。問診などから腸閉塞が疑われる場合は、事前にX線検査をすることもあります。

 

編集部:

その一方、胃の内視鏡検査なら、そもそも下剤は不要ですよね。

 

道躰先生:

はい。検査前に食事制限をしていただければ、「胃の中身」は空になります。下剤が必要なのは、胃よりも遅れて溶けた食べ物が届く大腸の内視鏡検査です。大腸の中身を空にするため、意図的に内容物を出す必要があるということです。

 

編集部:

大腸内視鏡検査の場合、すべての患者さんに鼻チューブ法を用いているのですか?

 

道躰先生:

いいえ。下剤を口から普通に飲めるのであれば、基本的に鼻チューブ法は適用しません。鼻チューブ法は、あくまでも「あの下剤が飲むのがつらいから大腸内視鏡の検査をしたくない」と考えている人への対策ですね。患者さんからのご希望があれば、原則として鼻チューブ法という選択肢をご用意いたします。下剤が苦手な人にも受診機会が広がれば何よりです。

 

下剤の届け方が違うだけで、検査の中身は一緒

編集部:

「チューブ法」は安全な方法なのでしょうか?

 

道躰先生:

基本的には安全な方法です。なお、誤って気管内に注入するといったケースを耳にしますが、レントゲンでしっかりと確認をするなどの医療者側が気を配れば、起こることではありません。

 

編集部:

検査中に緊急中止するような事態はないということですか?

 

道躰先生:

鼻チューブ法を受けたからといって、検査を中止するような事態につながることはありません。もしあるとしたら、鼻チューブ法とは別の不測の事態ですね。例えば、鎮静剤の影響で血圧が低下したり、ポリープを切除したら大量に出血したりと、そうした別の話です。鼻チューブ法はあくまで「検査前処置」ですから、下剤の注入が終わったらチューブは抜きますし、内視鏡検査と切り離して考えていただいてかまいません。

 

編集部:

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

 

道躰先生:

大腸内視鏡検査の下剤の量や味できつい思いをしてしまった人は、この機に鼻チューブ法という選択肢を覚えておいてください。とくに、大腸の検査が必要なのに見送っている人にとっては朗報だと思います。また、寝たきりや認知症のために自分で飲めず、なおかつ下血などにより大腸疾患が疑われる人にも有効な方法です。

 

編集部まとめ

鎌倉逗子胃腸肛門内視鏡クリニック(神奈川県鎌倉市)

 

どうやら、「下剤を飲まなくていい」のではなく「下剤を味わわなくて済む」のが、鼻チューブ法の特徴のようです。下剤の味や量に苦手意識があるために必要な検査が受けられないとしたら、鼻チューブ法を頼りにしてみてはいかがでしょうか。

 

【この記事の監修医師】

道躰 幸二朗 先生(鎌倉逗子胃腸肛門内視鏡クリニック 院長)

 

道躰 幸二朗 先生(鎌倉逗子胃腸肛門内視鏡クリニック 院長)

東邦大学医学部卒業。東邦大学医療センター大橋病院などで内視鏡・肛門診療を中心に臨床経験を積む。2021年、神奈川県鎌倉市に「鎌倉逗子胃腸肛門内視鏡クリニック」を開院。幅広い診療科目で地域医療に尽くしている。日本外科学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。日本臨床肛門病学会会員。

 

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