ストレスが続いたときの3つの未病リスクと、ストレスとの上手な付き合い方。
それが原因だったとは、と気付かないうちに積もる日々のストレス。社会の変化で増える現代ならではのストレスをはじめ、上手な付き合い方を聞きました。
消えないモヤモヤや今どきストレス、気づいた時から自由になる方法。
クロワッサン オンライン
大きな社会変化が止まらない今。
「家族や職場での人間関係による従来のストレスに加え、新型コロナウイルス対応やSNS疲れの影響によるストレスを訴える人が増えています」
上手に付き合うコツは、自身がストレスを感じている事実にまずは「気づく」こと。イライラや不眠といった気分や体調などの変化がなくても、日常的なあれこれの動作スピードが遅くなる、家事をやりたくなくなる、などの変化があったら要注意。自覚がなくても強いストレス下にある可能性が。
「ストレスを感じること自体は悪いことではありません。重要なのは、回復力です。適切な対処法を知れば、ストレス状態の慢性化を防げますから、必要以上に恐れなくても大丈夫です」
\ストレスが続いた時の3つの未病リスク。/
●自律神経が乱れる。
ストレスにより緊急のサインが脳に伝わると、交感神経が緊張して、戦うか逃げるか、の反応が作動。「これが続くと自律神経のバランスが乱れ、心臓血管系や消化器系など臓器の障害のほか、さまざまな心身症につながります」
●生活習慣病のリスクが上がる。
慢性的なストレスにさらされると、血圧や血糖値が上がった状態が続く。さらに、ストレスに対応するホルモンの材料、LDLコレステロールも増加。結果、糖尿病や脂質異常症、高血圧などの生活習慣病を招きやすい体質に。
●免疫力が低下する。
免疫細胞のひとつ、NK(ナチュラルキラー)細胞は、ウイルスやがん細胞と戦う働きがある。「ところが、ストレスによって分泌されるコルチゾールはNK細胞の働きを抑制してしまうため、免疫力の低下につながります」
【ストレスと上手に付き合うためにできること。】
1.体を動かす。温める。
体がゆるむと自然に心もゆるみ、ストレスの予防や軽減につながる。
「簡単なのは、伸びをすること。単純な動作ですが、ゆるめる効果は大きいです。副交感神経が優位になる深呼吸もおすすめ。吸う息の倍の長さで息を吐くように意識しましょう。鼻呼吸だと、より緊張がほぐれやすくなります」
また、体を温めるのも効果的。
「温かい飲み物を飲む、足元を温めるなどして、ほっとひと息つく時間を持つことを心がけましょう」
2.はじめてのことに挑戦する。
年齢を重ねると、経験が増えた分、すべてに新鮮味を失いがち。
「たとえば、アイラインやリップの色を変えたり、作ったことのない料理にチャレンジしたりなど、はじめてのことに挑戦する機会を増やしましょう」
新しい体験では発見や感動が多く、今後への伸びしろも大きい。達成感や期待感で前向きにもなる。
「失敗したとしても、初心者なので当然だとあまり落ち込まず、次なるチャレンジにつなげましょう」
3.ノートに書いて気持ちを整理する。
不満や怒りなどの嫌な気分は、大きなストレスへ育つ前に吐き出したい。
「信頼できる人に話すのもいいですが、それがしづらいときは、自分の気持ちを書くノートを作って感情を書き出してみましょう。文章でも、詩や短歌でもかまいません。言葉にすることで気分が落ち着きますし、あとで読み返すと自分を客観視できますよ」
表現することが好きなら、絵を描くこと、楽器の演奏をする、歌を歌うことなどもおすすめだそう。
4.いつもと違う店で買い物をする。
わくわくや好奇心は、心が喜ぶ刺激に。「今日は違う品揃えが見たい」と思ったら、やや遠回りしても、その気分に従う価値は充分にある。
「あるオープンカフェを見かけ、“今ここでカフェオレが飲みたい”と思いながらも泣く泣くあきらめたことがあったのですが、今でも思い出すことが(笑)。計画や動線から外れた行動は非効率的かもしれませんが、たまには気分に従って、今この時を大切にすると、幸せな感情が高まりますよ」
5.嫌なことがあったら即、いいことを探す。
「嫌な出来事にあったときの落胆や怒りといったネガティブな感情を、無理に抑える必要はありません。ただ、その状況下でもできることを探してみようと考えるだけで自己肯定感が増し、心がポジティブなほうへ向きます」
たとえば、家族でアウトドアレジャーを楽しむ予定が大雨でつぶれても、室内でできることを見つけて家族全員で過ごせる時間を楽しむ。無理のない代案を探す柔軟な思考が、ポジティブな感情を高めてくれる。
海原純子 さん うみはら・じゅんこ
医学博士、心療内科医、産業医
日本医科大学特任教授、昭和女子大学特命教授。歌手としても活躍。近著に『「繊細すぎる人」のための心の相談箱』(PHP研究所)。
撮影・青木和義 イラストレーション・網中いづる 文・知井恵理
『クロワッサン』1066号より