腰痛や肩痛、膝痛などの慢性疼痛には運動療法が有効/大須賀友晃連載
■慢性疼痛に対する運動療法の効果
腰痛や肩痛、膝痛などが3カ月以上続く慢性疼痛(とうつう)に対して、国際的に運動療法が有効であると数多く報告されています。
よく患者さんから「痛みがあるから、動けない」とお聞きします。例えばベッド上で安静にすると、筋肉量が1日1~2%減少し、筋力は1週間で10~15%低下すると報告されています。
特に大腿(だいたい)四頭筋や下腿(かたい)三頭筋など、重力に抵抗して働く下肢の筋肉は顕著に低下します。1カ月動かなければ約50%低下することになります。低下した筋力を回復することは、高齢になるほど難しくなります。
急性期で患部の安静が必要な場合でも、動かして良いところはしっかりと筋肉を使って動かすことが重要です。慢性疼痛の場合は損傷部位の改善に必要な期間を超えており、痛みがあっても基本的には動かしていきます。動かないことは筋力低下だけでなく、関節が固まったり、心肺機能(持久力)の低下を引き起こします。
それでは運動療法にはどんな効果があるのでしょうか。メカニズムについては割愛しますが、運動することで痛みが出にくくなり、筋肉がつくことで安定性が得られ、疼痛部位が守られることで痛みが軽減することが報告されています。
また運動することで脳内モルヒネが放出され、痛みを感じにくくする作用のある物質(セロトニンなど)の活動が活発になり、薬を服用しなくても鎮痛効果が得られます。このように運動は、筋力低下による運動機能低下と慢性疼痛の両方を改善させる効果があります。