若年性認知症、国内に推計3万6千人 前頭側頭型は「人格変化」も

若年性認知症、国内に推計3万6千人 前頭側頭型は「人格変化」も

 

 

 65歳未満で発症する認知症は、若年性認知症と呼ばれる。日本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業による調査では、2018年時点の国内の若年性認知症の総数は、約3万6千人と推計されている。このうち、アルツハイマー型認知症が53%と最も多く、血管性認知症17%、前頭側頭型認知症9%と続く。

 

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 3番目に多い、前頭側頭型認知症は、脳の前方部にある前頭葉などが正常に機能しなくなり、日常生活に支障が出る状態をいう。前頭葉などにたんぱく質がたまり、萎縮する脳の病気を説明する際には「前頭側頭葉変性症」と呼ぶことがある。

 

 前頭葉は、本能的な衝動を抑え理性的な行動をする▽人の気持ちを推し量る▽物事を計画的に進める▽物事に興味や関心をもち続ける――などの働きを持つ。行動異常型の前頭側頭型認知症では、こうした機能が低下し、人格が変わったり行動面で問題が出てきたりする。

 

 国際的な基準では、礼儀やマナーを欠いた脱抑制行動▽共感や感情移入ができない▽同じ行動を繰り返す常同行動▽食事嗜好(しこう)の変化――など6項目のうち3項目以上に当てはまると診断される。

 

■「若いのにありえない」、思い込みからの受診遅れも

 

 この病気の療養の手引きをまとめた一人、大阪大の池田学教授(精神医学)によると、65歳未満で発症する割合が高く75歳以上ではまれ。「若いのに認知症などありえない」「意欲の低下はストレスのせい」といった思い込みから受診が遅れることも多い。男女の比率はほぼ同じ。国内では遺伝性はまれで、どういう人がなりやすいかわかっていないという。

 

 うつや発達障害、まれな神経の病気などでないことも確認せねばならず、専門医でないと診断をつけるのは難しい。治療薬など治療法は確立されておらず、進行は止められない。ただ、記憶障害はあまりなく、道に迷うことも少ない。妄想や幻覚も少ない。池田さんは「保たれている機能は多くある。条件が整えば数年、仕事を続けることができる人もいる」と話す。

 

 2015年に難病に指定され、本人や介護者の経済的な負担は軽くなった。「時刻表のように行動する常同行動の特徴を生かして、その人に合うケアを日課にできれば、療養がうまくいくことが多い。10年以上在宅で暮らす人も少なくない。正確な診断をできるだけ早く受けることが大事」と池田さんは語る。

 

■認知症専門医の受診を

 

 それまでなかった自分本位の行動や同じパターンの行動に固執する常同行動がみられたら、かかりつけ医に相談するなどして認知症専門医を受診するとよいという。

 

 診断や治療は、前頭側頭葉変性症の療養の手引き(https://plaza.umin.ac.jp/neuro2/ftld.pdf)が詳しい。若年性認知症全般については、若年性認知症ハンドブック(https://y-ninchisyotel.net/wp-content/uploads/2022_jyakubook.pdf)が参考になる。(編集委員・辻外記子)

 

朝日新聞社