難聴11歳女児の逸失利益、「85%」と判断 死亡事故巡り大阪地裁

難聴11歳女児の逸失利益、「85%」と判断 死亡事故巡り大阪地裁

 

 大阪市生野区で2018年、聴覚支援学校に通う井出安優香(あゆか)さん(当時11)が重機にはねられて死亡した事故で、両親らが重機の運転手側に約6130万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、大阪地裁であり、武田瑞佳(みか)裁判長は被告側に約3770万円の支払いを命じた。賠償のうち、得られたはずの収入を指す「逸失利益」については、安優香さんが将来「様々な手段や技術を利用して聴覚障害の影響を小さくできた」と認定し、全労働者の平均賃金の85%を元に算定すると判断した。

 

【写真】大阪地裁=2022年1月6日、大阪市北区、朝日新聞社ヘリから、金居達朗撮影

 

 原告側は、安優香さんが補聴器を使ってコミュニケーションができたことや、音声認識アプリなどの技術の発展により、聴覚障害者の就労環境の改善が見込まれると指摘。安優香さんが就職する頃には「健常者と差異なく働くことができた」とし、逸失利益を健常者と同様に、全労働者の平均賃金を元に算定すべきだと訴えていた。

 

 一方、被告側は、逸失利益について、原告側の請求の「6割」にあたる聴覚障害者の平均賃金を用いるべきだと反論していた。

 

 障害がある子どもの逸失利益を巡っては、障害の程度やコミュニケーション力、学力・学歴、通った学校の卒業生の就職状況などが検討される。過去の裁判例では「健常者と同じように働けたとは言えない」などと判断し、低く算定されることが多かった。

 

 安優香さんの父・努さん(50)と母・さつ美さん(51)は「障害の有無に関係なく、誰にでも将来の可能性がある。社会にとって良い前例になるような判決を」と訴えていた。(松浦祥子)

 

朝日新聞社