高齢者を衰弱させる「コロナフレイル」、歩行速度低下や食べこぼしは危険視号 ③

高齢者を衰弱させる「コロナフレイル」、歩行速度低下や食べこぼしは危険視号

 

社会的な孤立がフレイルを招くケースも

 

 老いに伴う衰弱が身体の異変として表れる場合、高齢者当人も自覚しやすく、周囲の人間が気付く機会も多いため、大事に至る前に対策を講じるのは比較的容易だ。しかし、精神・心理的な面に表れる場合は勝手が異なる。

 

「精神・心理的なフレイルの特徴として最も顕著なのは、うつ症状です。うつ状態になると喜びの喪失、自責感といった症状に加えて、倦怠感、体重減少といった身体的な異変を伴うこともあります。また、認知機能の低下も特徴です。この場合、今まで問題なくこなせていた簡単な暗算ができなくなったり、買い物に行っても同じものばかり買ってしまうなど、適切な行動プランが立てられなくなります。厄介なのは本人が異変に気付きにくいこと。身体的には健康であっても、精神・心理的なフレイルだけが顕在化する人は多く、改善可能な段階で手を打つことができないまま、認知症の発症など回復余地のない状態に移行してしまうケースも少なくありません」

 

 さらに、身体的なフレイルと精神・心理的なフレイルと並び、「社会的なフレイルも憂慮すべきだ」と鈴木氏は警鐘を鳴らす。

 

「社会的なフレイルの特徴は、外出頻度や他者との交流の著しい減少、引きこもりといった点が挙げられます。家族と一緒に暮らしている高齢者でも、孤食が多かったり、コミュニケーションの頻度が極端に少ない場合には注意が必要です」

 

 身体的なフレイルは、日常生活に適度な運動を導入するといった自助努力によって予防・改善できる。これに対し、精神・心理的フレイルと社会的フレイルは他者とのコミュニケーション不足に起因する部分が大きく、解決のためには自助だけでは不十分であり、共助、互助といった観点に基づいたアプローチが求められるという。